星と灰の境界者 —ホシトハイノキョウカイシャ—
あらすじ
——星々の世界よりの使いが地に舞い降りた「天啓」の日から数百年後。
聡明なる天使たちが統治する国家ルミナ・グランディアは、かつて繰り広げられた悪魔たちとの戦乱から立ち直ろうとしていた。
魔物によって穢された土地を取り戻すために派遣される人間たちは境界者と呼ばれ、彼らの尽力によって街は再び安寧を取り戻していった。
しかし魔物たちは未だ滅びてはいなかった。
街の外を闊歩する凶悪な魔獣、人間に紛れて再起を目論む悪魔の噂。数十年の平和を経て、災厄の気配が再び漂い始めている。
とある街に暮らす境界者の青年・アレクセイは、ある日突然悪魔と邂逅したことで魔物化の呪いを受けてしまう。人間に戻る方法を探し求める中で彼は多くの人々に出会い、世界に満ちる謎と魔法について少しずつ知ってゆくことになる——。
星を宿した生命たちは、その冒険の果てに何処へ辿り着くのか。
世界観
魔法が人間に生まれつき備わった当たり前の力だと考えられている世界。人間はいくつもの種族からなり、数百年の不和と戦乱を経たのちに手を取り合うことを選んだ。
超越的な存在である天使と悪魔、そしてそのどちらでもない人間たちが生きる国での物語。
用語解説
【天啓】
…物語が始まる数百年前に起こった、虹色に輝く星が空から舞い降りた出来事のこと。
天使と悪魔はこの時以降に現れた存在で、人間の体に魔法の力が宿ったのも天啓後である。
人間たちはこの時降りてきた星を「天啓の舟」と呼び、天からの使者を遣わすとともに魔法という力を与えてくれたことから神の赦しの象徴として語り継いでいる。
【魔法】
…生命に宿る不思議な力。心臓付近にある「魔源石」という器官によって生命エネルギーが魔力に変換され、その魔力を体外に放出することで外界に影響を及ぼすことができる。
使える魔法の属性は各個体が生まれ持った一つの魔源石の色によって決まり、大きく分けて火・土・雷・樹・風・水・氷・毒・花の9属性が存在する。
魔法の力は武器や装身具に追加の魔源石を取り付けることで強化が可能で、そうした魔法道具の素材には魔獣の遺骸から採れる魔源石が利用される。
また、魔源石および魔力の色は人間にとって非常に大切な守護色とされているため、普段から自分の持つ魔力の色に合わせた服や宝石を身につけることが一般的になっている。
【ルミナ・グランディア】
…物語の舞台となる国。多数の都市が集まって国家を成しており、天使たちを頂点とした議会制によって成り立っている。
天使に仕える教会が公共事業の多くを請け負っており、境界者の派遣や食事の提供、初等教育などの充実が進んでいる。そのため住民の生活レベルは建国前に比べ格段に向上した。
しかし現在は国土の半分ほどが魔物によって脅威にさらされており、人間たちが生活できるのは安全が確保された街周辺の地域に限られている。
・地形と大まかな言語系統により、
アウルム・アエス・アルゲントゥム・フェルム・ハイドラルグ・スタンヌム・プルンブムの7つの地方が定められている。
・首都はフェルム地方北西部の都市コンコルディア。
・星印で示された街は「天政都市」と呼ばれる特別市で、天使が直に統治を行っている。地図中では境界者の都市テルミニア、学園都市ウィルトゥスが該当する。
・言語には、天使と聖職者が用いる「天啓語」と一般市民がコミュニケーションに用いる「共通語」がある。また各地方にはそれぞれの伝統語が存在し、地名や人名などに用いられている。
【境界者】
…都市の城壁の外に出て活動する職業の総称。天使の支配域を表す境界を守護し、乗り越え、拡張する人々。
境界外で脅威となる魔獣の駆除、魔物の支配から脱した土地の測量、植物や鉱石の採取など役目は多岐にわたる。
複数人で協力して身を守れるだけの技量を備えていることが境界者となる条件で、条件を満たす者には教会を上部組織とする境界者組合によって資格が与えられる。
【天使】
…強大な魔力を持ち、人間たちを統治している高位の存在。背中から生えた白い鳥のような翼、魔力と同じ色の眼が特徴。
理性的判断力に優れる反面、感情が極めて希薄であることが種としての特徴。信徒である人間たちに対しても常に理性に従って行動することを求め、人間同士の争いや暴力は罪だとして禁じている。
【悪魔】
…天使に匹敵する強大な魔力を持ち、天使と人間に敵対している存在。黒い蝙蝠のような翼、魔力と同じ色の髪が特徴。
本能に従って生きる野生的な種族で、他者を痛めつけることに強く快感を覚える性質がある。数十年前に勃発した聖と魔の戦いで天使軍により滅ぼされたと伝えられているが、実際には数少ない生き残りが存在する。
【魔獣】
…先の戦乱の際に悪魔たちが生み出し、野に放った生物兵器。様々な形態のものが存在するが、いずれも悪魔と類似した強い魔力と凶暴性を持つ。
悪魔と魔獣の両方を含めた総称として「魔物」と呼ぶこともある。
【人間】
…大きく分けて4つの種があり、その中に多様な生活様式の民族が含まれる。
ヒト種 |
最も多くいる種であり、外見的な特徴は特にない。 〈ヒト族〉…ごく一般的なヒト。魔法が使える。 〈灰色族〉…魔法が使えないヒト。天から平等に与えられた恩恵であるはずの魔力を持たないことから、天啓から間もない時代には都市外へ追いやられるなどの差別を受けていた。 その後天使によって「魔法の代わりとなる何らかの有用な技能を示せば国内に住むことを認める」との声明が出され、居場所を求めた各地の灰色族はやがて特殊な技能集団へ変化していくこととなった。 |
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亜人種 |
ヒト種と身体の構造は同じだが、外見に何らかの特徴がみられる種。 〈耳長族〉…長い耳と優れた聴力を持ち狩猟に長ける亜人。自然への敬意を重んじる者が多く、そうした生き方や高潔さから「エルフ(妖精)」と称されることもある。 〈小人族〉…洞窟内など、外界から隔てられた特殊な場所に街を築く亜人。限られた空間での居住に適した小柄な体格が特徴。 |
獣人種 |
皮膚を守る毛皮や爪先立ちの骨格など、ヒト以外の動物に似た身体的特徴を持つ種。 寒さの厳しい北方や山岳地帯に適応した結果だと考えられている。 |
魔人種 |
他の種に比べ大幅に強い魔力を持つ種。 魔力の色に染まった髪を持つことから悪魔の血を引いているとされ、長らく他の種から迫害を受けていた。 |