雪花霊異奇譚 —セッカ リョウイキタン—
あらすじ
21世紀も数十年目に差しかかる頃、人類は新たな脅威に直面することとなった。
無差別に人間を襲う異形の存在「霊異」が各地に蔓延り、都市の夜は怪物が支配する時間となる。それまで非科学的な空想だと考えられていたものが突如現実となり、人々は戸惑いながらも新たな常識に順応していった。
幼い頃に霊異によって日常を奪われ、訓練を重ねて霊異対策組織の一員となった少女・知春。高校生でありながら社会のために働く彼女の忙しない日常は、ある日届いた奇妙な知らせにより一変することとなる。
一つ目の知らせは、人が霊異に取り憑かれ異形と化す奇病「霊異憑きの病」の存在について。
もう一つの知らせは、知春に託された役目——罹患者の1人と協力し、病の原因を探るという任務について。
協力者との面会のため隔離病棟に案内された知春は、施設の奥で霊異憑きとなった幼馴染の少年・時雨と再会する……。
病を治す術はあるのか、なぜ霊異は生まれてくるのか。事件に巻き込まれた少女と少年は、時に悩みすれ違いながら真相へと近づいていく。
「奴等が喰うのは人の肉じゃない、人が生み出す感情だ」
世界観
日本のとある地方都市が舞台。
この時代では数十年前から発生し始めた怪物により、世界中の人類が脅かされている。
技術水準や文化はほぼ現代と同様だが、怪物の存在が原因で夜間の活動には制限が多くなり、経済発展はやや停滞している。
用語解説
【霊異】
…人が住む地域に出没する異形の存在。生物のように自律的に動き回るが、細胞やDNAといった生命の条件となる構造は持っていない。
形態は様々だが、視覚を司る発光器官・人間からエネルギーを奪う触手や肢のような器官・同族を捕食するための牙を備えた口腔状の器官の3つを共通して備えている。
また、発火や冷却など周囲の環境に物理的な影響を与える特性を持つものもいる。
明るい場所では活動が沈静化する特性を持っており、地下の暗い場所や夜間に人が多く集まる場所に現れることが多い。
霊異に襲われた人間は情動の喪失やストレス障害に似た症状を示す。このことから、人間から強引に引き摺り出した感情を吸収し何らかの方法でエネルギーにしているという説が提唱されている。
【霊異対策組織】
…霊異の被害から人々を守るために設立された組織。世界各国に存在するが統一された機構という訳ではなく、各々の国の消防組織などを母体とし独自に活動している集団である。
出現した霊異の無力化と市民の救助、霊異の特性の研究、加えて被害者の治療という3つの役割を担っている。